「どんな記憶なの?」


ノアの声は、透き通っていた。


一字一字、凛として意思を持っているようだった。


「…綺麗な…。
澄んだ場所に二人で一緒にいた記憶…。」


愛しい、という感情が今も
鮮やかに蘇る。


「…それから?」


ノアは僕に抱き着き、顔を僕の胸へと預ける。


ノアの温度がそこから広がる。

そう。


ちょうど、こんな感じだった。

…それから…?


オモイダシタクナイ…。


「…忘れた。
なんだったかな?」


そうじゃない。


身体が拒んでるんだ。


その先にある記憶を再生することを。


「…ルカ…。」


ノアは僕に口付けた。


僕はノアの唇に応えた。


「ね。抱きしめて。」


ノアは僕の背に手を回し、僕はノアの背に手を回した。


あたたかい…。