「あの、お会計したいんですけど?」




お店の人を捉まえると、ニコリと営業スマイルを浮かべられた。




「ご予約をお取りになられた方から、連絡が来ているので大丈夫ですよ?」




と言われても、そのまんま帰るのは気が引ける。


だから、払うことにした。



それにずっと、彼には奢って貰ってばかりだから。




.....最後くらい。





「ご...万円...」




さすが、最高級のフレンチ。


一人二万五千円で、二人で五万円。



一人分はデザート以外、手さえつけてないのだけど。




「ありがとうございました。
またのご来店、お待ちしております」




もう来ないであろう、高級レストラン。




私の今までの人生で一番のピンチ到来。



財布の中には、三十八円。


給料日まであと二日。


...なんとか、生きていけるのか?