「ふーん。せやのに、イライラしてん?」
力也は携帯を閉じて、座り直す。
「イライラなんかしてへんよ」
「してるよ。 …好きなんやろ?」
俺が好き?ナナミちゃんを?
……んなわけない。
「まさか」
俺は゛ありえへん゛という態度を示す。
ほんまに絶対、好きじゃないし。
「じゃあ、何でイライラしてんねん」
…確かに、イライラの理由はナナミちゃんやと、俺も思う。
でも、それは目の前であの光景を見たから。
好きやからショック受けた、とかじゃなくて。
ただ、切り替え早いなと。
…俺はそれを、しぶしぶ力也に話した。
そして、夏休み前のマンションでの出来事も。
「…なるほどな。 結局、拓が振り回されたわけな」
力也はケラケラ笑った。


