「…ごめん。なんか、また借りたら悪いなと思って」


「そんなん、いいのに。
 ナナミのせいで風邪引いたよな」


「ごめん」と、ナナミちゃんは謝る。

この子は、ほんまにいい子や。
俺のこと心配してくれて。


「気ぃ使わせて、ごめんな」


ナナミちゃんは首を横に振った。

…2人の間に、再び沈黙が流れる。


「拓馬くん」


ナナミちゃんは小さな声で、俺を名前を呼ぶ。
目の前からの熱い視線。

俺はわざと、前を見ないようにしている。
この視線に負けたら、あかん…。