あの女が階段を去っていく足音が響く。
俺は顔をひょこっと出して、いなくなったのを目で確認した。

…ナナミちゃん、授業中やろうなぁ。
いちいち連絡はだるいし…寝とこ。

再度その場に寝ころんで、俺は目を閉じた。


「…くん! …拓馬くん!!」


…自分の名前を呼ぶ声で目が覚める。
うっすらと目を開けていくと、視界にはナナミちゃん。


「っわ、ナナミちゃん!!」


「おはよう」


俺は反射的に起きあがった。
ナナミちゃんは、にっこり微笑んでいる。


「え? なに…何でおるん?」


「力也くんが、ここにおるって言うてたから」


「あー…力也ね」


あいつ、いらんこと言いやがって。

俺は携帯を開いて時間を確認する。
画面には゛18:12゛と表示されていた。