不思議なことに、あの夢はいつも続きから始まり、一段上ったところで目が覚める。そして、いつも日本人形が傍らにいて、階段の段数を告げるのだった。 「いいわ、昼寝でもしてきて」 母が困惑しきった顔で。 「うん」 梨子は部屋に入った。そして、ベッドを見て、小さく悲鳴を上げた。 確かに今朝、人形はクローゼットに入れた筈。 なのに、人形はベッドに座っていた。 「私から、逃げられると思ってるの?」 微かに、そんな声が聞こえた。