父は何度も頷く。 「そんなに気に入ったんなら、ベッドに置いとけば?あのぬいぐるみをどけて」 兄が言う。 「えー」 「いいんじゃないか?」 父の前で、嫌なんて言えない。 「そーする」 梨子は答えた。 兄が、ニシシと笑った。 その日、兄に監視されながら、梨子は人形をベッドに置いた。本当は置いときたくなかった。今すぐにでも、クローゼットに入れたかった。 「あっち行ってよ」 兄は知らんぷりだ。 「俺は寝たいんだ。早くその作業、終わらせろよ」