海を覗き込んで、俺たちは絶句した。 カヌーがない。 ロープの手繰り寄せてみると、先端の方がちぎられたみたいに消えていた。 「潮の流れに負けて、ちぎれたのかな」 バラーの顔は引きつっている。 「とにかく、操縦室にある、無線機で連絡しよう」 俺の言葉に、バラーが頷いた。 操縦室も、恐ろしくヌルヌルしていた。 俺とバラーは、無線機を探した。 それは、すぐに見つかった。 「これで、助けを呼ぼう」 バラーが、無線機で連絡を取る間、俺は外に出ていた。