「……あー、と。
便器じゃなくて、“どぶ”ぐらいにしときますか?」
結構、本気で青くなった部長に、若干申し訳なくなって、苦笑いを浮かべてそう言った。
勝手に私がやっただけなのに、それで部長に八つ当たり、とか。
情けなさ過ぎる。
「いや、れいれい、しおらしく言ってるけど便器とそんなに変わらないからね?
どぶもなかなか汚いからね?
というか、むしろ、どぶの方が汚く思える俺はどうかしてるんでしょうか?」
…本当に、口の減らない部長さんですよね。
ああ、なんか面倒臭くなってきた。
「…あー、部長。
とりあえず、次からは、窓の外に天空の城があるからって窓に両足かけてのぞきこんだりとかやめてくださいね。」
じゃあ、そう言って立ち去るつもりだったのに、それは先輩によって遮られる。
腕を私の首にかけ、いくらか私より高い位置にある顔がドアップで見えた。
その顔を見ながら、あ、こいつやっぱりチャラいわ、なんて、場にそぐわないことを思う。
自らの存在を主張する、耳を彩るピアスが、自棄に目に入る。
「首がもげます、部長。」
