「でも、ごめん。
今はちょっと、付き合うとかどうとかに興味がなくて。
だから、その気持ちには答えられない。」
ごめんね、もう一度そう呟いて、頭を撫でていた手を何度か跳ねさせてすっと離れた。
「…わかりました。
わざわざ来てくれてありがとうございました。」
律儀に頭まで深く下げた彼女。
若干の罪悪感を感じながら、良い子だなぁ、としみじみと思う。
顔をあげた彼女の瞳には、強い光が見えたので、とりあえずは良かったと思う。
「……あのっ、付き合うとか、望まないので!
……好きでいていいですかっ。」
最後に、一言。そう言った。
また同じ轍を踏まないように、きちんと笑顔を張り付けたまま、口を開いた。
「いいよ。
でもさ、君ならきっと、すぐに幸せになれると思うんだ。
可愛いし、良い子だし。
だからさ、別の人を好きになったら、今の言葉に変に罪悪感とか感じないで、頑張ってね。」
さりげなく、多分私は君のこと、一生好きにはならないよ、と示して、とびきり甘い表情を浮かべる。
一度だけ手を降って、黙って教室を去った。
扉を閉めたとたん、聞こえた叫び声に思わず耳を塞ぐ。
ん、とりあえず、泣かせずには済んだかな、と。
次は、男子を好きになって幸せになってね。
心の中でそう言葉を落として、歩き出した。
ああ、今日も同性に告白された…
何故だ、と心の底から疑問に思うが、慣れと言うものは恐ろしいもので、もうそんなことどうでもいいとすら感じていた。
でも、流石に三日連続で告白は辛い。
自分ってほんとは男なんじゃないかとさえ思えてくる。
