「はっ、なんだそれ。」
バカにするように鼻で笑う。
だけどそれが別に嫌じゃなくて。
それはきっと、先輩が本当に馬鹿にするような人じゃないとわかっているから、だ。
「………如月?」
低すぎない綺麗な声が、鼓膜をくすぐる。
私もこんな声が欲しい、と柄にもないことを思ってしまう。
神様はこの先輩に色々与えすぎだ、絶対に。
そんなことをするから部長みたいな可哀想な人がどうしてもうまれてしまうんだ。
「おい、如月。」
「……うっす!なんすか?」
「うっすじゃねぇよ。伝言。」
軽くはたかれて、また呆れたような表情をみせる。
くっそ、どいつもこいつも私の事を女子としてみなしてねぇだろゆーり先輩豆腐の角で足をぶつけて死ね。
軽くはたらかれた場所を自分で撫でながら、頭の奥底に入り込みつつあるその記憶をぐいっと引っ張り出した。
「えっとすね、ちょっと待ってください、明日の朝くらいまで。
今ので全部飛びました。」
「人のせいにすんな。
つか、明日の朝までとか舐めてんの。
今まだ午後3時なんだけど。何?死にたい?」
「滅相もございません。」
