季節は夏。8月の2日。
夏休み真っ只中のワタシ。
田舎者のワタシの家は、縁側がある小さな庭に、風鈴がリンリンと小さくしゃべってみたり
その風鈴を鳴らす優しい風が優しく肌をなでたり。
人が多い都会にはありえないことだろう。
そしてきっと、家の前にメダカがスイスイと泳ぐ小さな小川があることも。
その小さな小川をずっと歩くと、大きな川に繋がる。
川の名前はぁ………石種川っていったっけなぁ?
更に石種川を歩くと、青く広大な海が広がる。
宿題を適当に終わらせたワタシは、その海へと自転車のペダルを漕ぎ始めた。
海につくあいだは、ギラギラと光る太陽がワタシを照らしていたので、汗が頬を伝っていた。
ようやくついた海には、子連れの親子が海水浴をしていた。
ワタシはちっぽけな海の家でアイスを買い、浜辺に座って食べた。
アイスはキンキンに冷えていて、歯に凍みた。
そんな感じでアイスを食べているワタシの前に、1人の男の子がやってきた。
ワタシとおなじくらい………中2だろうか
『1人なの……?』
その男の子が言った。
ワタシは黙って頷いた。
『オレ、新木荘太。よろしく。』
『ワタシは篠多海美。』
さらっと自己紹介をすると、荘太はワタシと同じアイスを買ってきて隣に座った。
『アイスうまっっ』
荘太がぼそっと呟く。
てかワタシ、いきなり下の名前呼び!?
まぁ、いいか。
そのまま沈黙が続き、きまずいと思ったのか、荘太がカバンから何か取り出した。
『何、それ?』
『んぅ?コレ貝殻。きれいだろ??』
荘太がカバンから取り出したのは、薄ピンク色の巻き貝だった。
『穴の中の音を聞いてごらん。』
ワタシは言われたとおり、穴の中を耳にあてた。
ざわぁーっと、音が聞こえた。
『何の音??』
『波の音だよ。海の貝はその海の波の音を覚えてるんだ。』
『へぇ』
ワタシはつい、その音に聞き惚れてしまった。

