別にどこか目的地を目指して進んでいるわけではありませんでしたが、

いくら進んでも目の前の風景は変わることなく樹木が生い茂っているだけです。

流石のアリスも不安になり、近くにあった大きめの石に腰かけました。

「本当にどうしよ…、こんなとこで迷子だなんて出口を探す以前の問題だわ。」

途方に暮れアリスは膝に顔をうずめます。



――それからどれくらい経ったのでしょうか。

いつの間にか太陽は沈み、辺りは暗くなっています。

「寝てた…。」

むくりと顔を起こし、寝ぼけた目でぼんやりと正面を見ます。

「本の中でも時間って経つのね……ってそうじゃなくて、もう嫌だよ…帰りたい。」

真っ暗な世界はさっきよりも強い不安を呼び、10歳になったばかりの女の子は涙を流して泣きます。

「うぅっ…お母さま、お父さま…」

その時、何処からともなくアリスの耳へと歌声が聴こえてきました。