「夕方とはいえ、女性の一人歩きは危ない」

と、ドキドキする、甘く低い声が囁いた。

(この声…)

聞き覚えのある声に、私は驚いた。

スルリと、犯人が手を離すと、少し呆れつつ。

「…何やってるの?」

落ちた靴や、鞄を拾おうと、屈み込む。

すると、


「君を待ってたんだよ。さっき言っただろう?
"女性の一人歩きは危ない"って」

そう言って、白野空雅が、私より早く、靴と鞄を拾い上げた。

「だけど、いきなり後ろから、捕まえるなんて…」


「……実演さ。」

私に背を向けた彼は、音を立てないように靴を置いた。