廉斗は、なにも反応を示さない。


先生が急いで廉斗を検査する。


しばらくして、私たちに告げられた事実。


「残念ですが、耳がまったくきこえていません。神経が切れています。」


「治らないんですか?」



「恐らく、二度と音を聞くことはできないかと。」


廉斗は事故の後遺症で、聴力を失った。


二度と私たちの声は届かない。


病室に戻ると、廉斗が不安そうに私を見ている。


「何が…あった?聞こえないんだ…何も…俺…どうなった?」


まだ目覚めたばかりの廉斗は、言葉もたどたどしい。


私からは話せない。


二度と耳が聞こえないなんて。


もう音を感じることができないなんて。


音楽が好きだった廉斗。


カラオケが大好きだった廉斗。


廉斗の好きなものは、たった一夜の悪夢で壊されてしまった。