「もう会わないんじゃなかったのか?」 婚約の話も家では忘れ去られたように出てこなかった。 「…別に。言われたから、貴方のお父さんに」 ふいっと顔をそらして詩穂は呟いた。 ――――絶対なんかあるだろ… なにかあることはわかるが、意外に頑固な詩穂がこうなると口を割らない。 「…あのなぁ、何があったか知らないけど、俺と夏織の邪魔しないでくれる?」 詩穂は少し首を傾げた。 「邪魔、というかもう亀裂くらい入ったんじゃない?」 はぁ…? 今度は俺が首を傾げる番だった。