【暖人side】 いつも通り笑って、しっかりと屋上を出ていく後ろ姿。 夏織は、平然としていた。 俺に許嫁がいて、そいつが俺を誘惑しても、いつもと変わらず笑っていた。 「あらら、行っちゃったわね、彼女」 詩穂が含み笑いをした。 こいつ、急になんなんだよ…。 「お前、なんで今さら俺のとこなんかにきてんの?」 詩穂の片眉がぴくりと動いた。 小さい頃から許嫁として詩穂とは会っていた。 その、婚約という関係から逃げたのは、 詩穂だった。 会わない、と決めたのも詩穂だった。