たしか、あれは幼稚園からの帰り道だった

いつものように、幼稚園に迎えに来てくれたおばあちゃんに手をつないでもらって帰っているとき、私はある一点を見て固まってしまった


それを不思議に思ったのであろうおばあちゃんは、私の視線をたどるようにしてある一点にたどりついた


多分、見ているものが同じだったんだろう


おばあちゃんが、目を見開かせていたのを今も憶えている


「ねえ、おばあちゃん、あの人は誰?」


正しくは、あの人は誰?
ではなく、あの人はどうしたの?
だと思うけど、そんなことを考える暇はなかったんだと思う


その人は、冷たかった

触れたわけではない

感じ取った、、、と言えばいいのかな?


私は、その時怖くておばあちゃんの後ろへとっさに隠れた


「そうかい…心海も私と同じように…」


ボソッと言ったおばあちゃんの声はよく聞こえなくて、私は聞きなおしていた

そんな私に、おばあちゃんはゆっくりと説明してくれた


「心海は、あそこにいる人が見えるんだね?」


「うん
なんだかね、冷たくてね、怖いの」


「そうね、


あの人は″幽霊″なの」


「ゆう…れい?」


「もう、あの人はね


生きていないの…」


そう言ったおばあちゃんの顔は、今にも泣きそうだった