そして―‥‥‥‥、
グチャッ‥―!
自らの首を深く深く切った父。
まるで、噴水のように父の首から
吹き出る大量の血液。
――‥気管を切ったのか、
プシュープシューと音が鳴る。
―‥返り血を浴び、あたしの全身
は父の血で真っ赤に染まる。
目の中に、父の血が入る。
『―‥ぁ、‥あぁ‥‥、』
―‥バタン、と倒れる父。
気持ち悪い。気が狂う。
―‥窓から見える空が、父の血で
赤黒く見える。
ゆっくり、ゆっくり母に近付く。
『お‥お母さ‥‥ん‥。』
「―‥だ‥大丈夫‥。
さっ‥き‥お‥爺ちゃ‥んを‥
呼ん‥だ‥‥から‥―、」
息絶え絶えに、喋る母。
なのに、最期は綺麗に紡いだ。
――‥その、言葉。
「―‥‥、いい?桃華。
大丈夫、大丈夫だから。
何も、見えてない。
何も、聞こえてない。
だから、大丈夫よ。
―‥桃華。生きなさい。
中学校に行ったら部活をして友達
と遊ぶの。勉強も、ちゃんとしな
きゃ駄目だからね?
恋もしなさい。良い恋、をね?
高校もちゃんと卒業して、将来は
何になりたい?
―‥ふふ。まだ先の事よね。
お母さん、待ち遠しいわ。
桃華は、お母さんの宝物。
桃華は、幸せになるために生まれ
てきたのよ。―‥だから、忘れな
さい。この、全てを。
自分を生きなさい‥―。
―‥ハァ‥‥桃華‥‥、
泣か‥ない‥で‥―。
ほ‥ら‥‥‥‥‥―、
笑っ‥‥て‥‥?」
―‥母の、願いじゃないか。
笑え。笑うんだ、あたし。
止まらない涙を拭い、母に向けて
精一杯の笑顔を送った。
『―‥笑った‥よ?
―‥ねぇ、お母さ‥ん‥。
あた‥し、笑ったん‥だから‥―
お母さんも笑ってよっ‥‥―!』
母が、目を開けることは無かった。
