「ほら、足出しな」
またも有無を言わさず彼は私の足を掴むと白いパーカーの中から消毒液と絆創膏を取り出した。
金魚のように口をパクパクさせている私を麻場君はチラッと見上げると黒い瞳が妖艶に光り「ドキドキしてる?」そう聞いてきた。
「っ~~~!!」
うるさい心臓よ止まれ!
バンッと胸を叩くと麻場君は声を上げて笑った。
「まあ、まだ夏は始まったばかりだ。
俺達の物語も…だろ?」
意味が理解出来ずきょとんとした顔で彼を見ると、麻場君は静かに答えた。
「ほら、お前が書いている小説」
「そんなことまで知って…」
もう一度、彼の指は私の唇を閉ざした。
シュッと吹き掛けられた消毒液は傷に染みたが…それよりも刺激的な麻場君。
私の胸を焦がして止まない意地悪な彼。
