「と、と言うか何で麻場君がこんな所に…」
慌てて話題を変える私を麻場君は一度笑ってから、その後は残念そうに「えぇ~」っと声を上げた。
「入江は知らないんだ?
俺、ここ出身だから夏期休暇は実家に帰って来てるんだよ。
俺は同じ高校に入るよりも前に…小さい時からお前を知ってたけどな」
「う、うそ!」
驚きのあまり悲鳴に近い声を出してしまった。
私が彼を知るよりもずっと前から彼は私を知っていた?
パニクる私の頭を麻場君はポンポンと撫でる。
「じゃあ理解した所でベンチに座ろっか」
「えっ…なんで?」
麻場君は私の質問にスッと目を下に移すと私の膝の辺りを指差した。
「血、出てんじゃん。
この海の家、お前のばあさんの所だろ?
事情を説明したら消毒液とか絆創膏とか渡されて今日はもう上がってくれと伝えてくれって言われたよ。
帰りは遅くなって構わないからだってさ」
ニヤリと笑う彼に私は頬を隠した。
