最初から“もしかして”という気持ちはあったがまさか本当に彼が…。
カァーッと赤く熱を宿す体と早鐘のように響く鼓動が嘘でも夢でもないことを教えてくれている。
彼の涼し気な目が細められ満足気に私の反応を楽しんでいる。
そして、わざと体が密着するのではないかと言う程に私に近付き、そっと髪に触れた。
それだけで私の体温がぐっと高くなる。
けれど次に彼がしたことは予想も出来ないことだった。
突然、私の手首から髪ゴムをするりと抜き取ると前方から私の髪を後ろに一本に縛り始めた。
それはまるで軽く抱きしめられているよう。
「なっ!や、やめて麻場君!」
やっと名前を口にしたが目の前にある彼の綺麗な鎖骨にギュッと目を瞑った。
「なんだ…。
俺の名字知ってたんだ……」
