勝手な人…。
人をさらっておいて置き去りにするなんて。
じんじんと痛む膝に目を落とし、小さく息をはいた。
そしてゆっくりと入口付近に置かれているベンチに腰を下ろし、海風に吹かれた。
思ったよりも強風で被っていた麦わら帽子は首の後ろにスルッと落ちた。
「はぁ…」
一本に縛っていた髪ゴムを外すと、そのまま長い髪は胸の位置まで下りて風にふわふわ遊ばせた。
火照った頬には生温い風も心地がいい。
靡く髪をそっと掻き分けると、こちらをチラチラと見る数人の男の人達と目が合った。
私は、何だろう?と首を傾げたが、すぐに自分の格好とクーラーボックスを見て自分が仕事の最中であることを思い出した。
じゃあ、あれはお客さん!
にっこりと微笑み返すと、周りが急にどよめいた。
