「わかったわかった、…そういえばお前、片倉と仲良いよな?…もしかして好きだったりして? ……な~んて」
「うん、好きだよ。」


何で……。
俺をまっすぐ見つめて認めやがった。


「マジで !! お前、何であれ? ッツ痛ぇー! 何すんだよ !!」

思わず晋平を蹴りあげた。
真央を『あれ』って言うんじゃねーよ…。


「五月蝿いよ晋ちゃん……。でも、彼氏いるみたいだから…。」

目の前で爽やかにケーキを食べる桧山に晋平は口をポカンとアホ顔で見つめている。

「あいつ…彼氏いんの!? 」

ここにいるっつーの !!
歯をくいしばって言いたいのを我慢する。


「前に彼氏がいるの聞いたし…、待ち受けがね…。」

「何何?彼氏が待ち受け?どんなやつ?」

面白そうに桧山に食い付く晋平。
待ち受けって…秘密にしたがる真央が俺を待ち受けにするわけがない、写真すらも一緒に撮るのを嫌がるのに…、まさか……他の男か!?

「顔じゃないよ。手。」

「「は? 手?」」

思わず晋平とかぶってしまった。


「そ、 二人で繋いだ手が待ち受けだった…。それに…休み時間のたびにメールが来るんだよ? 」

「うわぁ…ひくわー。片倉、大丈夫かよ…。」

さっきまでアホ面だった晋平の顔がひきつっている。
悪ぃかよ…近づけないんだからいいんじゃねーか。

「それがさ…彼女、凄く嬉しそう何だよねー、あんまり表情にはでないようにしてるみたいだけど……ずっと見てきたからね。」


切なそうに笑う桧山に、少し胸が痛んだ…。

俺だって知ってる、笑うのが苦手で、無関心に見えるけど、本当は周りを良く見てて…傷つきやすくて怖がりで…優しい彼女。


「でも…最近、悲しそう何だよね…。無理してる…。彼氏と何かあったのかもね? これって僕、チャンスだよね?」


俺に向かってニッコリと笑ったコイツ。
気づいてて話してるんだと…確信した。

「おぉー! いけいけ ! お前、顔いいんだから優しくしたら落ちるって!」

俺達の様子に全く気づかない、空気の読めない晋平は桧山にエールを送る。

ガッ!!
「痛いっ!! 」

さっきよりも強く蹴りあげてやった。
足をかかえて蹲る晋平を無視して、桧山を睨み付ける。


「無駄な事は止めとけ…。」

遠回しに近づくなと伝える。

「見えない彼氏に…気遣いは無用だと思うよ?」



「 !? 何してんだよ !! 光輝 !!」

晋平に止められて、手を離した。
爽やかな笑顔に我慢が出来なくなって…気づいたら胸ぐらを締め上げていた。


「 どうしたんだよ !?」

晋平を無視して、ファミレスを飛び出した。

会いたい…。
真央に会いてぇよ…。