彼女には、オレがアイドルだってことが、

分かっていないようだった。


オレの返事に、微笑んだ彼女。

・・・

たくさんの女の子の笑顔は、

見慣れていたはずなのに、

彼女の笑顔に、オレは惹きつけられた。


「あの、名前を聞いてもいいですか?」


オレの問いかけに、何の躊躇もなく、

素直に答えてくれた。


「早乙女 鈴奈と言います。

あなたの名前も、聞いてもいいですか?」


・・・言ってもいいものか。

「…詩音といいます。」

「素敵な名前ですね。

声と名前は覚えました。

また、聞かせてくださいね。

私、目が見えないので、ここに来たときは、

また歌っていてください。

それを頼りにして来ますから」