夢への52の階段


「あーあ、また雨か・・・。

この季節、どうも嫌いだなぁ。」

学校の校舎の窓から、外を見つめる私。

私はこの夏、転校してきたばかりなのだ。

中原知菜。中学2年生。

恋をしたい年頃だけど、そう簡単にはできない。


私の理想の人は、かっこよくて、

頭もよくて、スポーツも何でもできる人。

そんなひと、どこにもいない。わかってる。

欲張りな私。この性格、直したいな・・・

でも、見つけた。欲張りな私でも、

十分満足できる人が。

名前は、松川寛樹。同じクラスで、

リーダーシップがあり、学級代表委員もしている。

おまけにかっこよくて、頭もいい。

テストでは必ず3位までに入るくらいだ。

彼とは、まだ話したことがない。

優しいし、女子のほとんどが彼を狙っているので、

そう話させてもらえない。

それに、私が松川君と話していると、

「転校生のくせに、なんで寛樹としゃべってんのよ。」

「生意気」などと

いわれるに違いない。

本当は、「私、知菜。よろしくね。」くらい、しゃべりたいのだ。

特にこわいのが、伊藤天音。いじめのリーダー的存在。

いわゆる、「みんなが私に従わないとだめ」

という、ただのわがまま女子。

天音も、松川君を狙ってる。


松川君の前になると、急に態度がかわるのだ。

本当にこわいくらいに――。