「あーあ、また雨か・・・。

この季節、どうも嫌いだなぁ。」

学校の校舎の窓から、外を見つめる私。

私はこの夏、転校してきたばかりなのだ。

中原知菜。中学2年生。

恋をしたい年頃だけど、そう簡単にはできない。


私の理想の人は、かっこよくて、

頭もよくて、スポーツも何でもできる人。

そんなひと、どこにもいない。わかってる。

欲張りな私。この性格、直したいな・・・

でも、見つけた。欲張りな私でも、

十分満足できる人が。

名前は、松川寛樹。同じクラスで、

リーダーシップがあり、学級代表委員もしている。

おまけにかっこよくて、頭もいい。

テストでは必ず3位までに入るくらいだ。

彼とは、まだ話したことがない。

優しいし、女子のほとんどが彼を狙っているので、

そう話させてもらえない。

それに、私が松川君と話していると、

「転校生のくせに、なんで寛樹としゃべってんのよ。」

「生意気」などと

いわれるに違いない。

本当は、「私、知菜。よろしくね。」くらい、しゃべりたいのだ。

特にこわいのが、伊藤天音。いじめのリーダー的存在。

いわゆる、「みんなが私に従わないとだめ」

という、ただのわがまま女子。

天音も、松川君を狙ってる。


松川君の前になると、急に態度がかわるのだ。

本当にこわいくらいに――。