「あの、雛森さん」
「へ?
な、なにかな??」
ようやく集中して仕事し始めた時、急に佐伯さんは私を呼んだ。
なにかわかんない事でもあったのかな?
見たところ何も問題なさそうなんだけど.....
「蓮はなんで偽名を使ってるの?」
「.....へ!?」
そういえば、考えたことなかった.....
なんでなんだろう?
私とは違って学校では顔隠してるんだから、ばれないようにではないだろうし...
「なんで...なのかな?」
「ってことは、やっぱり雛森さんも黒木蓮斗は偽名だってこと知ってるんだ?」
「っえ??」
なんだろう、今。
佐伯さんの顔を見た瞬間、少し鳥肌が立ってしまった。
なんかすごく怖い。
よくわからないけど今すぐここから逃げ出したい衝動にかられた。
「ねぇ、雛森さん」
「は、はい.....」
体が震える。
「蓮とは、どんな関係?」
どんな関係?
どういう意味?
私はなんて答えれば.....
「わ、私は、えと。
黒崎君は、私の、片思いで...」
「ふぅーん。
でもそれ、やめた方がいいと思うよ?
蓮はあなたを好きにならない」
何を言ってるんだろう、この人は...
震える体を必死で抑えて、ちゃんと佐伯さんの目を見た。
「たとえそうだとしても、私のこの思いは変わりません。
それに、まだ分からない。
黒崎君が私を好きになるかどうかなんて、分からない」
「分かるよ。
蓮はあなたを好きにならない」
そういって、佐伯さんはオーダーを取りに行ってしまった。
なんなんだろう、この人。
よけいに分からなくなった。
なんであんなことを言ったのだろう。
それに、なぜあんな冷たい目をしていたのだろう。
佐伯さんのことを知ろうとするともっと分からなくなった。

