「あ、黒木君!!」
なんというベストタイミングなのだ。
ちょうど向こうの方に黒崎君を発見した。
めんどくさそうに頭をかきながらも、こちらの方に歩いてくる黒崎君。
そしてその輪郭はっきりしていくうちに何故か私の顔はこわばっていく。
「んだよ.....」
「フロアチーフになんて口のきき方?
敬語つかえやコラ」
「は??
お前がフロアチーフ!?」
「そうよ、前田さん辞めたから」
「ふぅん、あっそ」
「だから敬語つかえやコラ」
「誰がつかうかコラ」
ほんとうになんて奴なんだ!!
私は最大限の睨みを利かせて黒崎君をじっと見た。
なのに全然動じない黒崎君に余計に腹が立ってきた。
この人はクマに睨まれたってこんなんではないのだろうか??
そんな気がしてきた。
「あ、のぉ」
「あ、ごめんね。
佐伯さん、この偉そうな奴はね
「蓮.....だよね??」
「「え!?」」
不覚にも黒木君と声がハモってしまったが今はそんなことどうでもいい。
佐伯さんの発した言葉をもう一度頭の中で繰り返した。
『蓮』
彼女は確かにそう言った。
普通の人ならば知るはずのない、その名前を.....
気になって黒崎君を見ると、その顔は青ざめて全身ががくがくと震えていた。
こんな黒崎君初めて見た。
この2人になにかあったのは間違えない。
なにがあったのか。
なにが黒崎君をこんなにも追いつめているのか。
「実愛.....」
黒崎君がやっと口にした言葉はたった2文字の、そして彼女の下の名だった。

