「綾瀬」
「なによ、話しかけないで」
「なんで怒ってんだよ。
意味わかんねーんだけど」
「話しかけるなって言ってるでしょ!
バカ、女の敵!!」
相変わらず意味不明な綾瀬。
なんで怒ってんだよ。
もう、わかんねーよ。
「.....あ」
急にハッとしたように、綾瀬がポツリと呟いた。
なんなんだ、さっきから.....
もうほんと意味不明だ。
さっきまで怒ってたかと思うと、今度は顔を真っ赤にしだす綾瀬。
けむりが出てきそうだ。
「なんか、ごめん」
いや、まぁ別にいいけど......
でも謝ったって、それはやっぱ付き合うのは無理ってことか?
好きだけど、付き合いたくはないの!
あ、でも好きだから!!
そういうことか!?
「迷惑だよね、でも、私やっぱりどうしようもなく黒崎君の事すきなんだな.....」
「は?なんだよ??」
何かぼそぼそとっと言ったかと思うと、いきなり綾瀬はバッと顔をあげて
『き、聞こえた!?』と言った。
聞こえてないと俺が言うと、力が一気に抜けたように、へなっと椅子にもたれかかった。
「なんて言ったんだよ?」
「だ、ダメっ!それだけは言えない!逃げさせて!」
「なんて言ったんだよ?」
今度はもう少し口調を強くして言った。
すると綾瀬は『っう!』と声を詰まらせ、しばらくきょろきょろと視線を漂わせた。
「だって、だって、黒崎君が私に嫉妬してたことにも嫉妬しちゃったんだもん」
「は??」
「もう、これ以上は無理~!!」
そういって電車の中だというのに綾瀬は走ってどこかに行ってしまった。
どういう意味だ?
なぜ俺が綾瀬に嫉妬してることになってんだ??
あぁ、分かった。
綾瀬は想像を絶するくらい鈍いのか。

