「ダメだよ、黒崎君!
死んでもいいなんて思っちゃダメ!
そんなこと思ったら私が許さないから!!」
あきらめて、ただ力なく立ち尽くす俺の前に、いつかの日のように綾瀬が手を広げて俺の前に立ちふさがった。
今度は俺に背を向けて。
俺よりずっと小さいはずのその背中は、すごく大きく見えた。
「どいて、どかないとあんたも殺すよ」
「どかないし、殺させない。
それに、佐伯さんは刺せないよ。
こんなにもまっすぐに人の事を想えるんだから。
そんな素敵な心を持ってるんだもん。
殺せないよ」
「なによ、わかったようなこと言わないで!
みあには蓮が必要なの!!
蓮はみあの物よ、誰にも渡さない」
ナイフを右手で握りしめ、刃先をこっちに向けまっすぐに進んでくる実愛に綾瀬は大丈夫だからと言って、静かに俺の前に立ちふさがったままでいる。
綾瀬は強い。
俺の何倍も、何十倍も。
小さな体で、自分よりも大きいこの俺を必死で守ろうとしている。
小さな肩を震わせながら。

