朝から仕事に追われ、考える暇がないのはいい事だった。

社長の出社時間は決まっていない。来ないかもしれない···

が、来た。いつもの様にブラックコーヒーを入れ社長室に運んだ。
顔を見ると、唇に傷があり夕べの事が現実だったと思い知らされた。
私が社長に付けた傷
『はい、どうぞ』
コーヒーをデスクに置いた。
『ありがとう』

変わらない日常

『昨日帰ったら、ワイシャツにお前のファンデーションついてた』


『えーー!?すみません。大丈夫だったんですか?』
『あー』

私は悪くない、のに謝ってしまった。襲われて抵抗したのだから。

被害者なのに!

『だから···』

と言いながら立ち上がり私に詰め寄り社長室の隅に追いやった。まずい!

持っていたお盆を盾に防御するも敢なく拘束された。
ここは会社だ。騒ぎ立てるわけにはいかない。


『なんなんですか?』
小さな声だが、はっきりと拒絶の意志を込めて発言した。

『静かに!皆にばれる。黙ってて!』

村川はそう言うと顔を近づけて来た。

顔を左右にして逃げる。
許せない!こっちが大人な対応で忘れてたやろうと思っていたのに。