貴方の隣に生きたくて

「ン?」

独り切りのトイレで
自分の腕時計を見た。
泣き過ぎで頭がズキズキする。
「いったぁい…」
そう呟きながら
長時間しゃがみ込んで
痺れている脚を無理矢理立たせ
トイレの中の鏡の前に立った。
「げっっ!マジか?」
鏡の中に映った顔は
泣き過ぎで腫れた目に
酷く落ちたマスカラ。
消えてるグロスに
ぐちゃぐちゃの髪。
かなりの醜さ。

それを、眉間にシワを寄せながら
一つ一つ直してく。

30分後、やっと終わった。

「ファぁ~。」

大きなあくびをしながら
トイレから出た。
しばらく進むと
背後から何者かに
腕を鷲掴みにされて
すぐ脇にある通路に
連れ去られた。

「きゃっっ!
いゃーーーーーー!
誰か助けテェ…」

叫んだ時には時すでに遅し。

目の前には
乃叶の知っている人物が…

「根室さん?」

私は、恐る恐る尋ねた。
そしてその男は静かに
私に近寄り、顔を寄せた。
「やっぱりね。
泣いた後の顔も可愛い。」
とブツブツ言いながら
私の両頬に手を添えた。