がさごそと通学かばんからなにかを取り出す梓。 それは、筆箱だった。 …私の。 「いつの…間に…」 掠れた声が喉をかすめる。 梓は口元だけで笑って、その筆箱を力いっぱい握りしめた。 「私の親友は、一人だけでいいから」 「待っ…!」 静止する暇もなく、くるくると回りながら宙を飛ぶ私の筆箱。 手をどんなに伸ばしても、届かなくて。 「…私、あんたのこと絶対許さないから」 なにもできずに柵の目の前で突っ立っている私に向かって言い放った梓。 その目は、空と同じ。灰色だった。