立ち止まっていては邪魔だとでも言うように押されて、再びゆっくりと歩を進める。 もう着くから切るね、と一言残して画面の赤い電話のマークを押した。 私に、笑顔をくれたのは。 私に、色をくれたのは。 踏切を渡る。 向こう側から来た人たちとすれ違う。 本当に、ただの気まぐれで。 本当になんとなく、そのとき思い出した。 彼の香りと、あたたかさと。