ぽつり、ぽつりと。
なにかが頬に落ちてきた。
それが雨だと気づいたのは、周りの人が傘をさし始めたからで。
天気予報にない雨に、折りたたみ傘を持っていなかった人々は悲鳴を上げながら走り出す。
天気というものは気まぐれだ。さっきまで、あんなに晴れていたのに。
すぐに雨は強くなって、私を濡らす。
このまま、雨が私を流してくれればいい。
私という存在を、消し去ってしまえばいい。
私さえいなかったら、レナは死ななかった。
私さえいなかったら、梓は幸せな人生を送れていた。
私さえいなかったら、未来はあんなに涙を流すことはなかった。
私さえいなかったら、亮は今も、家族みんなで笑えていた。


