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こんなからっからの体育祭日和でも、体育館裏は相変わらずじめじめしている。
体育館裏……
『あの時』を思い出して、思わず髪に手をやった。
…ごめんね、あんな乱暴な切りかたして。
中学生のころから一回も切ったことがなかった、長い長い髪。
なんだか髪を切ることって、過去を振り切って新しいことに向かう…って感じがするから、今まで切るのを躊躇ってたんだ。ほんとは。
…過去を振り切ることなんて、していいのかなって。
…もしかしたら、あれがいい機会だったのかもしれない。
「ねえ…藤堂くん」
今までなにも言わずにもじもじとしていた佐伯さんが、口を開いた。
体育館裏に似合わない、清々しいくらいの甘ったるい声。


