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「ほら、あの人でしょ?噂の……」
「そうそう」
______人殺し_______
廊下を歩くだけでまとわりついてくる、ヒソヒソ声。
大丈夫。慣れてる、こんなの。
唇を噛み締めて、そ知らぬふりをして前を向く。
だけど、隣で歩く、この人は、
私の手を握りしめて…怒ってるのかな。震えながら彼女たちを睨んでいた。
慌てて私たちからそらされる視線。
「…なにも、知らないくせに」
震えたままの未来の唇から発せられる、小さな声。
ああ、私のために怒ってくれてるんだ。
そのことが嬉しくて、彼女の言葉に首を振った。
「しょうがないんだよ」
どんなに善人になったつもりでも、どんなにつらい思いをしても。
私が過去に犯してしまった過ちは、消えやしないんだから。


