「…いいって…驚いただけだろ?」
いつも通りを装っている藤堂の声も、心なしか震えている気がする。
私、なんてことしちゃったんだろう…
お互い何も言えぬまま、進めぬまま。
係員の生徒に進むよう促されなかったら、ずっとその場で立ち止まっていたかもしれない。
「…にしても…」
しばらくして、先に口を開いたのは藤堂。
その声には、さっきとは打って変わって笑いが帯びている。
「上原があんな叫び出すとは…」
「とっ…藤堂!!!」
ツボに入ったのか、それからもくくくと笑い続けている。
…顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。
でももう、さっき感じた恐怖はどこかへと去っていた。
そうだよね。どうせ作り物だし。
こわいって思うからこわいんだ。
平常心でいれば、きっと…


