先生の合図から少しして、『藤堂くん』と呼ばれた人が入ってきた。 一瞬で静まる教室。 空気が変わった、と、確かにそう感じた。 私でさえ、口をぽかんと開けて、藤堂くんに見入っていた。 「藤堂 亮です。今日からよろしくお願いします」 当たり障りのない挨拶でも、低くて耳をくすぐるようなその声にして言われると、とてつもなく素晴らしいもののように聞こえた。