「○○はまだ見つからないのか」







「申し訳ございません。少し目を離した隙に抜け出したようで」




白衣を着た男達の会話を私は天井にある極僅かな隙間に身を入れて聞いていた。







さすがの彼らも、まさか探しものがこんなに近くにいるとは思わないだろう。






私は、彼らの姿を慌てふためく姿を眺めながら笑いだしそうになる衝動を抑えていた。









そう、私は彼らにとって大切な人間だ。



いや、大切なサンプルと言った方が言いかもしれない。




私を必死に探している彼らは、医者ではない






科学者だ。









それも、化学兵器を専門とする科学者だ。