「美奈さんが幸せそうで良かったです」

「えー? 急になにー?」


「色々苦労してこられたのを知ってるので、素直にそう思っただけですよ」

「…そっか、そう言われるとそうかもしれないね。
龍輝と二人での生活は、やっぱり色々大変だったけど…でも直人さんがいつも近くで助けてくれたから、だから私は笑顔で居られた。
まぁ、馬鹿龍輝の相手をして毎日疲れてたけどね!!
でもそういう色んなことがあって、今の生活がある。 苦労はしたけど、今は凄く幸せだよ」


にっこりと笑った美奈は、俺の髪をグシャグシャッとした後に歩き出す。


「じゃ、私はお風呂入って向こうの部屋でまったり過ごしてるから。
龍輝、しっかり勉強しなさいよー? 朔也くん、その馬鹿のことよろしくね。
おやすみー」

「おやすみなさい」


パタン、と閉まるドアとほとんど同時に、朔也はまたコーヒーを飲む。
それから俺を見て…、


「数学から行こうか」


…と、不気味なくらい優しい顔で笑った。