「…真由が、沢良木に…?」


ドンッ と心臓を銃で撃ち抜かれたような衝撃と、激しいめまいが襲う。




「…まぁ、暴行って言ってもココ奪われただけだけど。
でも、真由ちゃんにとってもお前にとっても、すげー大事なものだろ」


トントン、と自分の唇に手を当てた大雅は、また小さく息を吐いた。




「…あの子、ずっと苦しんでるよ。
俺らの前では泣かないけど、絶対一人で泣いてる。
世界で一番大切な子が泣いてるのに、お前は何やってたんだよ」

「………」


「…詳しいことは部屋で話す。
こんなところで言いたくない」

「…あぁ」




大雅に促され、フラつく体をなんとか前へと進めていく。




……。




久しぶりに入った部屋は、閉め切っていたせいで半端無い暑さとなっている。
窓を開けてもそれが変わることはないだろうから、エアコンの冷房を強めにかけ、大雅を見る。


…大雅はソファーに横になり、大きく息を吐き出した。




「沢良木 涼太は真由ちゃんに惚れてる。
だから真由ちゃんに無理矢理キスをして、真由ちゃんを自分のものにしようとしたんだ。

…明日、沢良木 涼太は真由ちゃんを公園で待ってるらしい。
何をするつもりかはわからないけれど、その場に行っても行かなくても、後々面倒なことになるのは確かだよ。

…龍輝、どうする? まさかこのまま沢良木 涼太のことを放っとくなんてないよね?
真由ちゃんのこと、このままにはしとかないよな?」


エアコンから吹き出る風が、俺たちの髪を揺らす。

真っ直ぐに俺を見る大雅を見つめ返し、小さく息を吐いたあと、ただ静かに目を閉じた。