……。
土曜日。
「家族と過ごす」と決めたため、追加の着替えや夏休みの課題をマンションから持ってくることにした。
直人さんは仕事で居なくて、美奈は所用がある。ということで、マンションへは一人で帰ってきた。
数日間離れてただけなのに、なんだかとても懐かしい。
そのマンションを見上げていた時、突然に胸ぐらを掴まれた。
「お前、今までどこで何やってたんだよ」
…大雅。
冷たいその声に、尋常じゃないものを感じる。
「何か、あったのか…?」
「携帯の電源切りっぱなし。
それじゃあ携帯電話の意味が無いと思うんだけど?」
大雅のその言葉で、ハッとする。
やっべ…携帯の電源、切ったままだった。
真由に何も言わずに数日間を過ごしてしまったことを、今更思い出した。
「…悪い、すっかり忘れてた。
“誰からも連絡無いなぁ”とは思ってたけど、電源切ってたら反応があるわけないよな」
「はぁ? お前さ、明日のこと何も知らないわけ?」
「え、明日? 明日何かあるのか?」
「マジかよ、ありえねー。
お前どんだけ馬鹿なんだよ。この大馬鹿アホ龍輝」
いつになく苛立った顔の大雅。
その顔のまま髪の毛をグシャグシャにし、僅かに息を漏らした。
「真由ちゃんが、沢良木 涼太に暴行された」
「え…」
「真由ちゃんが苦しんでる時に、お前は何やってたんだよ」