……。
助手席の椅子を少しだけ倒し、小さく息を吐く。
そんな俺を横目に、窓を半分ほど開けた美奈が髪の毛をかきながら言葉を出した。
「実は少し前ね、担任の先生から電話があったの。
“最近は真面目に授業を受けていましたが、成績は下がり気味です”だって。
なんっで真面目に授業受けてるのに成績下がるわけ?」
「…んなもん知るかよ」
「彼女のことばっかり考えてるからでしょ?」
「………」
「あ、図星なんだ?
あの子でしょ、2つ上のー…えーっと、名前なんだっけ? 美咲ちゃん?」
…それ、元カノだっつーの。
「美咲は元カノ。
今付き合ってるのは真由」
「え、別れたんだ? て言うか、“真由ちゃん”って初めて聞く名前だね」
「…そうだっけ?」
「そうだよぉ。初耳でーす」
……真由のこと、言ってなかったっけ。
んー…言った気になってたのかな?
「ね、真由ちゃんってどんな子? 年上?年下?同い年?
派手な子?それとも大人しい?
龍輝の彼女になるくらいだから、やっぱり派手で強引な子かなぁ」
「あー…1つ下で、優の親友」
「優ちゃんと同い年!? じゃあ優ちゃんがキューピッドなんだね!!」
「いや、それは違…――」
「優ちゃんの親友ってことは、やっぱりちょっと派手なのかなー。
“夜露死苦”とか挨拶されたらどうしようー」
「――…聞けよコラ」
つーかなんだよ「夜露死苦」って。
アンタはいつの時代のヤンキーだ?
「で、いつ連れてくるの?」
「…はい?」
「だっていつかは結婚するでしょー?
それなら早いうちに会っておきたいじゃん」