……。
ヤバい。
心臓、バクバクだ。
真由と離れた瞬間に、鼓動が一気に速まった。
まるで、バスケの試合を終えた直後みたいな…いや、それ以上の速さで心臓が動いてる。
「…落ち着けよ、俺」
アホみたいにニヤつくなよ気持ち悪い。
いつもと同じ“俺”で居ろ。
焦るな。強要すんな。
いつも通りの笑顔で、いつも通り過ごせ。
「…って、無理くせー」
……今すぐぶっ壊したい。
真由の全部が知りたい。すべてが、欲しい。
「…こういう時はどうすりゃいい?」
どうすれば落ち着く?
どうすればいつもの俺に戻れる?
「……健吾」
…の、マッスルな決めポーズでも思い浮かべようか。
………。
………。
……ぷっ…。
「頭ん中なのに、リアルに再現されるお前はなんなんだっ…!!」
なんで「俺の大胸筋を見ろ!!」とか言ってんだよ。
どんだけ筋肉馬鹿なんだ。
…まぁ、おかげでだいぶ落ち着いたけど。
よし、何かあったら健吾を思い出そう。
アイツの決めポーズを思い出せば多分大丈夫だ。
「………」
だぁーもぉ!!
呼んでもないのに出てくんな!!
……。
…その後しばらくの間、健吾の最上級の笑顔とマッスルポーズが頭から離れず。
真由と買い物をしながらも、次々ポーズを繰り出す健吾との闘いは、ひそかに続いた。



