二人の距離。




そんなことは気にもせず、どんどんと歩いてい……く?!!

何でこっちに向かって来てるの〜?!

いや、あたしじゃないかもしれないし…落ち着け落ち着け〜っ!!

ぎゅっと目をつぶると、足音が止まったのが聞こえてそっと目を開ける。

…途端、彼に支配されたように動けなくなってしまった。


「久しぶり、宮内さん。また高校からもよろしく。」

軽く彼があたしに微笑むだけで、キャーっと黄色い歓声があちこち聞こえてくる。

それに圧倒され、聞こえないぐらい小さな声で「よろしくお願いします。」と言った。

それが彼には聞こえたらしく「うん、こちらこそ。」と律儀に頭を下げた。


「…じゃあ、俺はもう行くね。入学式から遅れたら、ヤバいんじゃない?」


悪戯っぽく笑った橘くんは、そう言い残し去っていった。

それと同時に、動けなくなっていた身体がふっと軽くなるのを感じた。