二人の距離。




…ふわっと、春の風に吹かれながら大群の中から出て来た彼。

加奈子ちゃんは近寄ろうとするが、その凄まじいオーラに近寄り難いようだった。


「………噂通りだ。」


ぽつりと呟いて、うっとりしながら彼を見つめている。


長身で、きりっとした眉毛にキラキラ輝く瞳をした切れ長の目。

少しくせっ毛のある黒髪。

そして、ここにいる誰もを魅了するような…薄い唇。


それはあたしにとっても、いつまでも見慣れなくて…胸が騒ぎ出すような感情だった。