18歳・春-

東京・新宿

新宿駅の連絡通路で、あたしは、ただ呆然としていた。

あまりの人の多さに。
人々の歩く早さに。

雑踏の中に立ちすくみ、あたしは呟いた。
『どうして皆、自分の目的地が分かるんだろう…?』


地元から東京駅まで、ローカル列車と新幹線を乗り継いで3時間半。
そこから、中央線でやっと新宿までやってきた。

でも、あたしの目的地はここじゃない。
ここから違う沿線に乗り換えて、これから住む町へ向かうのだ。

だけど…ねぇ、新宿駅は広すぎる!!
どこから、どこに向かってどう電車に乗って行けばいいのかわからないよぉー。


駅の通路をぐるぐるぐるぐる歩き回って、
なんとか、乗るべき列車のホームにたどり着くのに30分近くかかった。


この時は、まだ新宿駅の外には出なかった。
まだ、私にとっては、乗り継ぎ駅でしかなかった『新宿』という街。


後々、この街が自分にとって、とても意味のある場所になるなんて、
この時は思いもしなかった…。


大好きで、怖くて、だけど、少しの優しさもあって、そして大切な思い出の場所。
ここがいつか自分にとって、懐かしい場所になるなんて、この時は思いもしなかった。