あー、ウサンくせーと若干思いながらも、何故かヤツのペースに乗せられるアタシ。
23歳の男からしてみれば、18歳の上京娘なんて簡単過ぎたんだろう。

地元じゃちょっとは遊んでいたアタシも、東京でちょっと大人の男から口説かれているというシチュエーションに酔っていたのかもしれん。

アレ?っと思った時にはチューされちゃってるし!!
しかも、ベロ入ってるしー!!
わー…こんな公衆の面前で何すんじゃーい!と思うも、まわりは全然無関心で。
そんなもんかい。

で、そのうちユリコの事を思い出したアタシ。
「あ、友達のトコに戻んなきゃ」と切り出すと
「あ、じゃ連絡先教えてよ」と自分の名前と電話番号をメモに書いて渡された。

それを見ると、自宅の番号らしい。名前はイイヤマ ヨシフミと書いてあった。

なんだか気乗りしなかったが、そのまま会えなくなっちゃうのは寂しい気がしたので、
あたしも自分の名前と電話番号をメモって渡した。

「じゃーね。明日電話するわ!」とそいつ、イイヤマは消えていった。

取り合えず、ユリコのトコに戻ると、未だ見知らぬお姉さん達と踊り狂っていた。
ちゅーか、明らかにトランス状態じゃん…。
お姉さん達も楽しそうだけどさ、テンションマックス過ぎて、ハイになってやがる。
もうそろそろ、営業終了時間も近いからか、ホール全体が謎のテンションだった。

とりま、アタシもやけくそになって、盛り上がってやった。
最後の方は、笑いすぎて覚えてない。



そんなこんなで、夜が明けた。
イベントも気付いたらあっさり終わっちゃって、皆帰り始めた。
もう二度と会わないかもしれないお姉さん達と、「またねー」と挨拶して別れた。
「おやすみなさーい」とクラブの玄関で店員に挨拶して、外に出る。


外は、朝だった。まだ初夏に入ったばかりの朝はミョーに肌寒く、空も白かった。
人もまばらな歌舞伎町を、心地よい疲れを引きずりながら、西武新宿の駅まで歩く。
ユリコもポツポツと一言、二言だけ喋りながら歩く。

始発が走り始めた新宿は、ちょっとだけザワザワし始めていた。
でも、きっとこの時間の新宿は一日で一番静かなんだと思う。