ゼロスは、ミリィのこの国には珍しい黒髪を右手で優しくなでつけた。


「貴女は優しい子です。

 貴女のことを幸せにしてくれる方がきっと現れるはずですよ」


そう優しく囁かれても、ミリィは笑うことが出来ない。


『お師匠様にも幸せになって欲しいんです』


そう言いたくて、ミリィはグッと喉まで出掛かっていた言葉を飲み込む。


「私はもう幸せだもの」


『お師匠様に拾ってもらえて』


「でも、貴女の魔力は少なすぎるんです。

 この国では、魔力が少なければ寿命も短いとされています。

 だから、貴女には誰よりも幸せになって欲しい。

 ここにいるより、もっと大きな幸せが貴女を待っていますよ」


優しく全てを包み込むように、ミリィは抱き寄せられながら、その言葉をきいた。


もう何度も告げられた言葉。